岐阜県飛騨地方の本屋事情 2021.09.18
はじめに
こんにちは。ライターのリョウです。
私は今年の 5 月に、古本とコーヒーの店を始めました。飛騨地方には古本屋が数えられるほどしかなく、そのことを寂しく感じていた気持ちが古本屋を始めるきっかけでした。
今回はそんな飛騨地方の本屋事情を皆さまにお伝えしたいと思います。
本屋にインタビューしてみた
高山市の中心部でブックスアイオーという本屋さんを経営されている池田英作さんにお話を伺いました。
スーパーマーケットの駐車場の一角にあるブックスアイオーさん。入り口付近には池田さんが作った野菜が販売されていました。
リョウ:高山の本屋事情について教えてください。
池田さん:いわゆる町の本屋さん(雑誌や単行本の小説など、幅広く本を扱う店)はぜんな書房、田近書店、ブックスアイオー。全国チェーンの本屋さんはゲオ高山店と三洋堂書店。専門的な本を扱うのは児童書専門のピースランドです。
リョウ:本棚づくりなどで、他の書店さんと差別化をはかるためにされている工夫はありますか?
池田さん: 例えばゲオ高山店などでしたらレンタル事業で人気のアニメと合わせたマンガの販売。 三洋堂書店などの全国チェーンは、全国一律の品ぞろえになりがちなので、自店では、客層に合わせた本の選び方を心がけています。他店の強みがどこにあるか、それに対して自店ではどのような棚作りができるかを考えています。
リョウ:私も旅先ではその町の本屋さんに行って、町の人がどういう本を読んでいるかを読み取るのが好きです。 特に古本屋は、その町の人が読んだ本が集まる場所であり、郷土史に関する本やその地域でしか流通していない本があったりするので、町の本屋さんを観光案内所のように利用しています。本屋さんからその町の成り立ち、産業、文化を感じ取るのです。 ブックスアイオーさんでは、特産品のトマトやほうれん草に関する農業の本、DIY や家具づくりに関する木工関連の本が飛騨らしさを感じる棚作りでした。池田さん、貴重なお話をありがとうございました!
家庭菜園、農業、DIY、建築といった、飛騨らしさを感じる本棚。
もう一軒、本屋ではないのですが、飛騨地方で本屋事情を語るうえで外せない場所、「やわい屋」を紹介します。
やわい屋の目の前は、田んぼの稲穂が首を垂れていました。
高山市から車で 20 分ほどの宇津江という地域にある、民藝の器と人文私設図書館です。
以前は古本屋として営業されていましたが、2020 年 6 月頃より私設図書館という形に生まれ変わりました。
やわい屋の私設図書館に置いてある本は、すぐに役立つ本ではないかもしれないけども、いつか役に立つかもしれない本だと感じます。
それは、ビジネス書や実用書のような即戦力的な本ではなく、人生の価値とか、生と死についての本のような、今も昔も変わらず、人間にとって共通の問題について書かれた本です。
やわい屋店主の朝倉さんにもお話を伺いました。
朝倉さんは、「読書とは、備えるためのものだ」と語ります。
朝倉さん:先のことが分からない世の中で生きていくために、何があってもいいように備えておく。 そのために先人達が書き残した本を読む。例えばコロナ禍において備えとして読むべき本は伝染病のペストに立ち向かう民衆を描いた小説、カミュの『ペスト』でしょう。
私は、いつもと違った本に出会いたかったり、気持ちがもやもやしている時にはやわい屋の私設図書館に行きます。
建物の二階に上がると、壁一面の本棚に人文系の本がずらりと並んでいます。
どんな本でもインターネットで注文すると翌日には自宅に届くこの時代において、現実の本屋さんに求められる役割は、偶然の出会いだと考えています。
インターネットでは、題名や作者を知っていなければ、検索すらできず、目的以外の本を購入することは難しいです。
しかし本屋さんへ行けば、自分の興味のある本の他にも、全く知らなかった本がたくさん並んでいます。
ふと気になった表紙に惹かれて購入した本が、ずっと手元に置いておきたくなるような大切な本になるかもしれません。
そんな偶然の出会いを求めて、あなたも町の本屋へ行ってみませんか?
さいごに
最後に、私の営む住職書房について紹介します。
住職書房では、ブックスアイオーさんでも扱っているような、飛騨の町の成り立ち、産業や文化が分かるような本や、朝倉さんがお話されたような「備えるために読む本」を置いています。
住職書房の二階古本屋スペースです。畳に寝転がりながら本を読むこともできます。
それらの本は購入もできますし、コーヒーを飲みながら読むこともできます。
お客さんに合わせた本をおすすめすることもできますので、いつもと違った本を読んでみたい。
本を読みたいけどどう選んでいいか分からない。そんな時はどうぞお気軽に相談しに来てください!
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